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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
人は皆悪いのだ。信じたものは売られるのだ。心の善いものはばかな目を見せられて、とても世渡りはできないのだ。わしは嘲笑したいような気がするのだ。わしは思うのだ。わしの優しいのは性格の弱さだ。わしはそれに打ちかたねばならない。ひどい事にも耐える強い心にならねばならない。わしは自分でひどい事に自分をならそうと努めているのだよ。
お兼 まあ。そんな事をする人があるものですか。自分の心を善くしょうと心がけるかわりに悪くしょうとして骨折るなんて。
左衛門 (飲み飲み語る)わしは悪人になってやろうと思うのだ。善人らしい面をしているやつの面の皮をはいでやりたいのだ。皆うそばかりついていやがる、わしはな、これで時々考えてみるのだよ。だが死んでしまうか、盗賊になるか、この世の渡り方は二つしか無いと思うのだ。生きてるとすれば食わねばならぬ。人と争わずに食うとすれば乞食をするほかはない。世の中の人間が皆もののわかる人間なら乞食はいちばん気持ちのいい暮らし方だろう。だがいやな人間から犬に物を投げてやるようにして哀れみの目で見られて残り物をもらって生きるのはいちばんつらいからな。