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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

親鸞 あの時私とお前と仏様の前にひざまずいて五つの綱領を定めたね。その第一は何だった。

僧一 「私たちはあしき人間である」でございました。

親鸞 そのとおりだ。そして第二は?

僧一 「他人を裁かぬ」でございました。

親鸞 その綱領で今度のことも決めてくれ。善いとか悪いとかいうことはなかなか定められるものではない。それは仏様の知恵で初めてわかることだよ。親鸞は善悪の二字総じてもて存知せぬのじゃ。若い唯円が悪ければ仏様がお裁きなさるだろう。

僧一 (沈黙して首をたれる)

僧二 でもあまりの事でございます。

親鸞 裁かずに赦さねばいけないのだ。ちょうどお前が仏様にゆるしていただいているようにな。どのような悪を働きかけられても、それをゆるさねばならない。もし鬼が来てお前の子をお前の目の前でなぶり殺しにしたとしても、その鬼をゆるさねばならぬのじゃ。その鬼を呪えばお前の罪になる。罪の価は死じゃ。いかなる小さな罪を犯しても魂は地獄に堕ちねばならぬ。人に悪を働きかけることの悪いのは、その相手をも多くの場合ともに裁きにあずからせるからじゃ。お前は唯円を呪わなかったろうか。お前の魂は罪から自由であったろうか。