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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

それは恋人の運命を幸福にすることを目的としない、否むしろ、時として恋人を犠牲にする私の感情が含まれているものだ。その感情は憎みと背を合わせているきわどいものだ。恋人どうしは互いに呪いの息をかけ合いながら、互いに祝していると思っていることがあるのだ。恋人を殺すものもあるのだ。無理に死を強うるものさえある。それを皆愛の名によってするのだ。愛は相手の運命を興味とする。恋は相手の運命をしあわせにするとは限らない。かえではお前をしあわせにしたか。お前は乱れて苦しんでいるな。そしてお前はかえでをしあわせにしたか?

唯円 (ある光景を思い浮かべる)おゝ。あわれなかえでさん!

親鸞 恋が互いの運命を傷つけないことはまれなのだ。恋が罪になるのはそのためだ。聖なる恋は恋人を隣人として愛せねばならない。慈悲で哀れまねばならない。仏様が衆生を見たもうような目で恋人に対せねばならない。自分のものと思わずに、一人の仏の子として、赤の他人として――

唯円 (叫ぶ)できません。とても私にはできません。

親鸞 そうだ。できないのだ。けれどしなくてはならないのだ!

唯円 (眩暈を感ずる)あゝ、(額に手をあてる)互いに傷つけ合いながらも、慕わずにはいられないとは!