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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

なんという光栄であろう。朝夕、仏様をほめる歌をうたって暮らすのだ。その時はもう私の心に罪の影さえおとずれない。そして、(涙をこぼす)この世に苦しんでいる無類のふしあわせな人たちを摂取することができるのだ!(間)おゝ、不安よ、去れ。(黙祷する)

唯円と勝信と登場。

唯円 (手をつく、重々しく)御気分はいかがでございますか。

親鸞 もう近づいたようだ。わしは兆を感じる。

唯円 (何かいおうとする)

親鸞 (さえぎる)いや。もう避くべからざるものを避けようとすまい。運命を受け取ろう。お互いに大切なことのみ言おう。

唯円 …………

親鸞 わしはもう覚悟している。

唯円 (苦しく緊張する)この上は安らかな御臨終を…………

勝信 (泣く)

親鸞、唯円沈黙。勝信の泣き声のみ聞こえる。やがてその声もやみ、一座森とする。

親鸞 仏様がお召しになるのだよ。この世の御用がつきたのだよ。この年寄って病み耄けているわしを、この上この苦しい世のなかにながらえさせるのをふびんとおぼしめしてくださるのであろう。わしももうずいぶん長く生きたからな。九十年――といえば人間に許されるまれな高齢だ。もうこの世に暇をつげてもいい時だ。