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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
けれどそのときからわしに一つの兆があきらかに感じられはじめた。わしが死ぬということが……虫の知らせだよ……(顔色が悪くなる)
勝信 お臥っていらっしゃいませ。(親鸞を助けて寝床に臥させる)お苦しゅうございますか。
親鸞 うむ水を飲ませておくれ。
勝信 (湯飲みに水をついで親鸞に飲ませる)
親鸞 肉体的苦痛というものはだいぶ人間を不安にするものだ。地上のいちばん大きな直接な害悪だ。多くの人間はこの害悪を避けるためには、魂の安否を忘れてしまうほどだ。人間に与えられた刑罰だ。わしも断末魔の苦しみが気にかかる。わしはその苦しみに打ちかたねばならない。この最後の重荷を耐え忍ばねばならない。(額に玉のような汗をかく)何もかもじきにすむのだ。そのあとには湖水のような安息が、わしの魂を待っているのだ。
唯円 そしてひかり輝く光栄が?
親鸞 死はすべてのものを浄めてくれる。わしがこの世にいる間に結んだ恨みも、つくったあやまちもみんな、ひとつのかなしい、とむらいのここちで和らげられてゆるされるであろう。墓場に生えしげる草はきたない記憶を埋めてしまうであろう。わしのおかした悪は忘れられて、人は皆わしを善人であったと言うであろう。