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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
なにしろ土佐の国と越後の国ではとても再会のできないのは知れていますからね。それに法然聖人は八十に近い御老体ですもの。
良寛 法然様はなんと仰せになりましたか。(涙ぐむ)
慈円 親鸞よ。泣くな。ただ念仏を唱えて別れましょう。浄土できっと会いましょう。その時はお互いに美しい仏にしてもらっていましょう。南無阿弥陀仏とおっしゃいました。
良寛 それきりお別れなされたのでございますか。
慈円 忘れもせぬ承元元年三月十六日、京はちょうど花盛りでしたがね。同じ日に法然様は土佐へ向け、お師匠様は北国をさして御発足あそばしました。
良寛 法然様は今はどうしていらっしゃいますでしょう。
慈円 もうおかくれあそばしました。そのたよりのあったのは上野の国を行脚している時でしたがね。お師匠様は道に倒れて泣き入られましたよ。
良寛 ではほんとうに生き別れだったのですね。
慈円 はい。(衣の袖で涙をふく)
両人しばらく沈黙。
良寛 まだ夜はなかなか明けますまいな。
慈円 まだ夜中過ぎでございます。
良寛 寒くてとても眠られそうにはありませんね。
慈円 でも少しなと眠らないとあすの旅に疲れますからね。
良寛 では少し眠ってみましょうか。