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なんぼく

南北

横光 利一

「人間」1921(大正10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,591 字 · 40 页

青空文庫

秋三は堅い柴を折るように、膝頭で安次の手足の関節をへし折った。そして、棺を立てると身体はごそりと音を立てて横さまに底へ辷った。

秋三は棺を一人で吊り上げてみた。

「此奴、軽石みたいな奴や。」

「そやそや、お前今頃から棺桶の中へ入れたらあかんがな。お医者さんの診断書貰うて、役場へ死亡届出さにゃ叱られるわして。」とお留は云った。

「そんなら、もういっぺん打ちやけるか?」

秋三はお霜を眺めてそう訊くと、お霜は安次の着ていた蒲団を摘まみ上げて眺めた。

「そんな汚い物、焼いて了え。」と秋三は云った。

「よう云うてくれるな。これでもお前、洗濯してちゃんとしたら、結構間に合うわ。」

「まだそれでも、着て寝よう思うてるのやな。」

「きまってるわ。」

「しぶったれ!」

「何がしぶったれや!」

「まアまア伯母やんみたいなしぶったれて、あったもんやないわ。」

すると、お霜はいつになく厳しい眼付で秋三を睥みながら腰を延ばした。

「よう云うな! 汝や自分の棟の下で飯が食っていけるのは、誰のお蔭やと思うてる。此のしぶったれの伯母が有ってこそやぞ。それも知りさらさんとからに、渋ったれ渋ったれって一寸は人の恩も考えてから云いや!」