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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

綱手が、立上った。百城も、鳥目を置いて立上った。

「有難うございます。御綺麗な、京にも、こんな御綺麗な、夫婦衆は、一寸、見られまへんどすえ。有難う存じます。何うえ、このお美しさは」

婆さんは、そう云って、綱手に見惚れていた。

杉木立の、鬱々とした、山気と、湿気との籠めている中に、大きい堂が、古色を帯びて建っていた。傾斜した山地を、平にしたところに建っていて、その堂へ行く細い苔道には、いくつも、杉丸太が二三段ずつ横にした、段があった。綱手は、膝頭を押えるようにして、その一つ一つを登って行った。

「お頼み申す」

何んの答えも無かった。綱手は、どこに、父の亡骸が埋めてあろうかと、見廻したが、そうしたらしい、新しい土の盛上ったところは、どこにも無かった。皆、草と、苔とが、物静かに、清らかに、黙っていた。

「お頼み申す」

百城が、前より大きく叫んだ。遠くに鳴く、小鳥の声と、高い梢を渡る風の音しかしなかった。

「物申す、義観と仰せられる方のお住居は」

微かに、部屋の中で、音がした。深い、屋根の下、高い杉の下に陽を遮られて、障子の色は沈鬱であったし、縁側の、朽ちかけた板は、湿っていた。