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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

と、叫んだ。爺は、竈の前に、立っていたが

「何が?」

「そら、いつかの、お雛さんのような――さっき登って行かっしゃった、お侍衆と、いつかござった、そら――齢をとると、ぼけて」

「お前がか」

「お前が、ぼけて――」

「う、う、義観さんのところへ行くと、仰しゃって、お登りになった――そうそう、あのえらい斬合の後でのう」

「その時の、嫁御寮に、何んとまあ、美しい、よう、似てござる方」

深雪も、庄吉も、身体を固くして、昂ってくる心を、押えて、じっと、聞いていた。深雪は

(姉のことであろう)

と、思ったし、庄吉は

(月丸のことではないか――いいや、小太郎?――いいや、小太郎は、坂本から、登ったのだから――)

と、思うと

「婆さん」

と、声をかけた。

「その、お侍は、いい男で、齢の頃、二十二三か、四五ではないか」

「そうえ――本当に、そっくりよな、爺さん」

婆は、深雪を、じっと、眺めていた。客は、婆の大声と、深雪の美しさに、物も云わないで、話を聞き、深雪を、見ていた。

「義観って坊さんを、訊ねて行ったって、何をしに、行ったのか、聞かなかったのかい」

「えろう、沈んで、ござって、碌々口も利きませんがの、いつか見た時に、あんまり、美しいので、よう憶えていましたが――」