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なんがさんだい

南画三題

中谷 宇吉郎

白端溪硯「東京新聞」1956(昭和31)年6月23日<br>墨と硯と雪と「週刊サンケイ 1巻12号」サンケイ出版、1952(昭和27)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,372 字 · 11 页

青空文庫

と、よく言う。決して嘘やお世辞はいわない男であるから、私も我が意を得たりという顔をする。というのは、「素人の絵は、下手なところがよいのだ」という信念をもっているからである。

それには良い例がある。

小宮(豊隆)さんが仙台におられた頃、札幌の行き帰りに、よく小宮さんところへ寄って、文人墨客の会をしたことがある。その時、小宮さんが必ず招待された客の一人は、法文学部のP教授であった。非常に熱心な南画家で、画を画くのに必要な道具を、全部揃えてもって来てくれるので、便利だという点もあったらしい。

P教授は、もうすっかり玄人の域に達し、枇杷であれ、南天であれ、とっとと描いてしまうくらいの腕である。

ところで仙台の大学には、絵の会があって、毎年その展覧会をする。その時には、亡くなられた安井(曾太郎)さんを呼んで、批評をして貰うしきたりになっていた。

或る年、P教授は、家中一杯に自作の絵を並べて、安井さんを無理矢理に引っ張って行った。

あのおとなしい安井さんのことだから、神妙に、それ等の絵を見てくれたが、うんともすんとも言われない。黙って次ぎ次ぎと見て行かれるだけだったそうである。