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なんがさんだい
南画三題
中谷 宇吉郎
白端溪硯「東京新聞」1956(昭和31)年6月23日<br>墨と硯と雪と「週刊サンケイ 1巻12号」サンケイ出版、1952(昭和27)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,372 字 · 11 页
墨と硯と雪と
両面の浮彫もいい彫刻であると思う。今ではどこへ行くにもそれこそハダ身はなさずというふうでアメリカへ行くにも持っていった。
墨と硯と雪と
二十年くらい昔の話になるが、一寸むつかしい病気をやって、伊豆の伊東で、二年ばかり療養生活をしたことがある。その頃退屈しのぎに、大分油絵を描いたが、そのうちに墨絵に転向した。だんだん無精になって道具立がおっくうになったからである。
もっとも墨には、前から少し関心をもっていたことも、一つの原因である。寺田先生が晩年に、墨のコロイド的研究をされ、引きつづいて硯の研究をされたがなかなか面白い結果になった。われわれの祖先が、古来親しんで来た墨と硯とには近代科学の眼から見ても、いろいろ面白い問題がたくさん含まれているのである。
寺田先生の研究は、普通市販の墨と硯とについてであるが、あの研究方法を使って昔の中国の名墨や名硯の研究をやってみたら、何か素晴らしい発見がありそうに思われた。その頃丁度日本画を描いていた友人がいて、その男が墨に凝っていた。いろいろな墨の蒐集家のところを廻って、墨をすらせて貰って、墨色図鑑を作っていたが、その中には非常に綺麗な墨色のものがあった。