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なんがさんだい
南画三題
中谷 宇吉郎
白端溪硯「東京新聞」1956(昭和31)年6月23日<br>墨と硯と雪と「週刊サンケイ 1巻12号」サンケイ出版、1952(昭和27)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,372 字 · 11 页
墨は原則として、濃くした場合は、素人には、墨色の良否がそう目立たない。しかし淡くしてみると、一目にしてその差がわかる。この頃日本で作っている墨は、油煙墨であって、淡くしてみると、茶色がかった濁った色をしている。ところが中国の昔の松煙墨は、いわゆる青墨であって、淡くしてみると、青みがかった透明な色をしている。
青墨ならば、どれでもいいというわけには行かないが、名墨といわれているものは、この青みが非常に綺麗である。中国には、これを「幼児の瞳をみるよう」だといった文人もあるが、まさにそういう感じのする色合である。
この名墨の墨色の因って来るところが、もし科学的に解明されたら、これは一寸した収穫である。役には立たないが、面白いことは、たしかに面白いであろう。それで元気になったら、一つ東洋文化の神秘をうかがう大研究をやろうと決心した。
それについては、予め墨色について一応の知識をもっておく必要がある。それには自分で墨絵を描いてみるのが、一番実際的である。という結論に達した。それで早速硯と墨とを手に入れる算段をしたわけであるが、世の中はよくしたもので、運よく嘉慶の素晴らしい墨と、端溪の画硯とが手に入った。