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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

たっぷりと水に浸けたまま二人の鎌尖が器用に裁く楮の束から、かすかな白さでにじみ出る灰汁は、青い澱みの中にそこはかとなく消えて行った。

「ユミちゃん、あんた、惣兄ちゃのあれってどんなひとだと思う?」

しばらく黙り合ってから、よしがまたぽつんとそれを言い出した。余程気になっているのだろう。わざわざユミの家に駈け込んで来て、ものも言わずユミを納屋のわきへ引っぱって行ったと思うと、大変なことがあんのよユミちゃん、おらの家の惣兄ちゃの嫁さまがくるんだってと、息を弾ませて話した時から、どんな女だと思うと訊くのであった。

「お母さったらない、とってもそわそわしてんのよ。何でもな、嫂さ、嫂さって優しくしろやだって。なんぼおらだって、それぐらいのこと言われなくたってわかってるわ。」

その次に会った時は、こんなことを言いながら、不平とも嫉妬ともつかない眼で頬をふくらました。

よっちゃんの兄さんと好き合う女だもの、いい女にきまってるわと、そう答えるほかはない。よしからはじめてきかされた時は、それがもう腹に子供が出来ているというので、惣吉をも女をもあさましく厭わしいものに思ったが、だんだん考えているうちに、その女に妙な羨しさを感じてきた。