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ぜんこんどんこん

善根鈍根

佐々木 邦

「オール読物」文藝春秋社、1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,638 字 · 28 页

青空文庫

「えゝ、私、もう三月ばかり後から生れて来れば宜かったと思いますわ」

「何故ですか?」

「存じません。オホヽヽヽ」

斯ういう暗示は直ぐに利く藤浪君だ。貞代さんは此方から申込めば必ず嫁に来てくれると思った。その後、念の為めに試して見た。

「貞代さん」

「はあ」

「貞代」

「はあ」

「貞代でも宜いんですか?」

「結構よ。私、もう三月後から生れて来れば妹ですもの」

「これから三年です」

「御卒業?」

「はあ。僕が二十五で、あなたが二十六になります」

「二十五よ、私。同じじゃありませんか? 満なら何方も二十四ですわ」

藤浪君はこれで理解が出来たと思って上京したのだった。一学期間大いに勉強した。野球部から勧誘があったけれど、応じなかった。

「君は生れ更ったね。豪い」

と高等学校からの同級生が感心した。

「次第があるんだよ」

「ふうむ」

「僕一人の力じゃない。郷里に待っている人があるんだよ」

と藤浪君は大威張りだった。

しかし夏休みに帰郷したら貞代さんは町の呉服屋「丸喜」の総領息子と婚約が定って、九月早々祝言ということになっていた。藤浪君は憤慨したけれど、今更仕方がなかった。

「金三郎さん、あなた、喜んで下さるでしょう?」