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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

「なにか変わったことがあったのだ」昌子はそう思った、「……それも普通のことではない、お顔つきも声も人が違ったようにひどく変わっていらしった」なにか事があったのだろう、昌子は疑いとおそれのために、その夜はほとんど眠らずに明かした。

明くる朝、兄の省吾は起きて来なかった。頭痛と熱感と全身倦怠を訴え、二三日休むと云いだした。

「なにか中毒したような気持だがたぶん風邪だろう、一昨日の晩ちょっと寒かったから……」

そして自分がいま分担している仕事の継続を昌子に頼んだ。……よく晴れた日だった、五百坪ほどある庭を蔓薔薇の垣で仕切って、南がわに母屋、北がわに研究所の建物がある、明治の末ごろに某ドイツ人が建てたのだという、木造だががっちりとした二階建てで、東から南へ広いテラスがあり、酒倉にでも使ったのかコンクリートで造った五坪ばかりの地下室もあった。現在そこは実験用材料の冷蔵室になっているが、食べ物や飲み物の貯蔵場にも使われる、……昌子はひとりで研究室へはいっていったが、心は暗くふさがれているし、不眠のあとで頭もはっきりしなかった。北がわの窓を明けると、百坪ばかりの空地が見える、それは終戦のすぐ後に信三が買ったもので、そこへ新しい研究室を建てるはずになっていた、