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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

松代には納得のゆきかねることだったが、拒む理由もないような気がしたので、通帳を受け取って母屋へ帰った。……昌子は五つになる省一と添い寝をしていた。

「あなた、お兄さんが生命保険にはいっていたという話を、お聞きになったことがあって」

「生命保険ですって」昌子はようやく眠った省一のそばからそっと起きて来た、

「……さあ、そんなこと聞いた覚えはございませんけれど、どうかなさいましたの」

「いまその保険が取れたからと云って渡してくだすったのよ」松代は通帳をそこへ出しながら云った、

「……なんでもお兄さんと相談で、毎月の物の中から掛けていてくだすったのですって、戦争前からだっておっしゃるのよ」

「金高はどのくらいですの」

「それはまだ見ていないの、昌子さんちょっとごらんになって、あたしなんだか怖いようよ」

昌子は封筒から通帳を出してひらいてみた、それは某銀行の信託預金で額面は十万円という大きなものだった。……昌子は眼をみはった、そしてその金額を見た刹那に、なにやら云いしれない予感のようなものを直覚した。

「まあどうしましょう」松代もその数字を見てびっくりした、

「……こんな大きなお金の掛け金が、月づきいただく物の中から払い込めるはずはないわ、保険とおっしゃったのは嘘なのね、村野さんはあたしたち親子をお救いになろうとして」