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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
だがそんなことはなかった。してみると、この黒い灰をこしらえた以後に於いて、被害者はどういうわけかその理由は不明だが、煙草を吸わなかったと考えていい。と同時に、灰皿の吸殻は毒物を含んでいなかった、だからその後で、被害者は紙片を焼くなどの行動が平気でとられる程、健康であったことを物語る。こういう解釈はどうだね」
「大いに気に入りましたね」
「僕もそう思っていた。多分この説は君が気に入るだろうとね」
「しかしですね、長谷戸さん。死んだ主人鶴彌氏は、当夜この部屋ばかりにいたわけじゃないんで、土居嬢を送るために玄関へも行ったでしょうし、手洗いへも行ったでしょう。また寝室や廊下や階上などへも行ったかもしれない。そういうとき吸殻を捨てる場所は到るところにあったわけですね。窓から吸殻を捨てることも有り得るでしょう」
「で、君は何を主張したいのかね」
「何も主張するつもりはありません。ただ今のところを説明の補足として附け加えたかったわけで、結局あなたの説に深い敬意を表する者です」と会釈をして「もう一つ伺っておきたいことがありますが、例の黒い灰をこしらえた直後、鶴彌氏は死亡したという御見解なんでしょうか」