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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
「とんでもない出鱈目だ」
亀之介はすぐ否定したが、語勢は乱れを帯びていた。
「東京クラブの雇人たちが証言しているところによれば、あなたは右の時刻前後に亙る三回、クラブから出て居られる。第一回と第二回のときは、帽子も何も預けたまま出て居られる。第一回は窓からクラブの庭へとび下りた。第二回のときはクラブの調理場をぬけて裏口から出た。第三回目は玄関から堂々と出られた。このときは帽子も何も全部、預り処から受取って出た。そうでしょう」
「知らないね、そんなことは」
亀之介は否定したが、語勢は一層おちた。
「第一回のときは、この邸の庭園に入り、その窓の外から室内を窺った……」
亀之介はぎくりとして、窓枠にかけていた手を引込めた。
「あなたは室内に於て、兄の鶴彌氏と土居三津子の両人が向きあっているところを見た。そこであなたは、時機が悪いと思って、庭園を出てクラブへ引返した」
「君は見ていたのかい。見ていたようにいうからね」
亀之介は、やや元気を盛り返した。
「第二回目は、あなたがその窓から室内を窺うと、もはや三津子氏の姿はなく、兄の鶴彌氏ひとりになっていた。その鶴彌氏は、そこにある皮椅子に腰かけ、左手を小卓子の方へ出して、ぐっすり睡っているように見えた。