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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

――そこであなたにおたずねしたいのは、事件の当夜、あなたはこの部屋へ入って来られて、この空缶を見ましたか。どうです」

帆村の目は、するどく三津子の横顔へ。

「さあ……空缶は見ませんでしたけれど……」

否定はしたが、三津子はあと口籠った。

「見ませんけれど――けれど、どうしたんですか」

三津子は写真の中を熱心に見入りながら、

「この缶でございますね、レッテルの貼ってない裸の缶で、端のところに赤い線がついている……」

「そうです。それです」

帆村はその細い赤線がついていたことまで覚えていた。そして検事の方へ目配せした。検事は心得て、大寺警部に耳うちをして、本庁へ電話をかけ、その空缶をすぐここへ持ってくるように命じた。

「その空缶は、たいへん軽い缶詰ではございませんか」

「えッ……そ、そうかもしれません」

帆村は電撃をくらったほど愕いた。“たいへん軽い缶詰”――そんなことは今まで想像したこともなかった。帆村は愕いたが、三津子の方は別に愕いていなかった。

「その缶詰なら――その缶詰なら、あたくしはこの部屋で見ました。しかしこの写真にあるように、あけてはございませんでした」