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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
「どうです、お末さん、この缶は……」と帆村は極力冷静を維持しようと努めながら呼びかけた。
「実物を見ると、なるほどこれなら知っていると、気がついたでしょう。どうです、お末さん」
お末は返事をしなかった。
「お末さん。あなたはいつこの缶詰を手に持ったのですか。どこで持ったのですか」
「……存じません。全然あたくしには覚えがないんですの」
「だってそれじゃあ君、まさかあなたの幽霊が指紋をつけやしまいし、説明がつかないじゃないですか。あなたがこの缶を手に持ったことは明々白々なんだ」
「あとでよく考えてみますけれど、全くあたしには合点がいかないんです」
お末の取調べはその位にして、一時下らせるより外なかった。
帆村は係官の前へ出て、自分の困惑を正直にぶちまけた。
「お末さんが、なぜあんなに頑強に『全然覚えがない』といい張っているのか、訳が分りませんね。それが解けると、この事件は解決の方向へ数歩前進すると思うんですがね」
「今まで気がつかなかったが、あのお手伝いはなかなか変り者だね」と長谷戸検事が本格的に口を開いた。
「帆村君のいう彼女の頑張ぶりを解く一つの手段として、あの女の住居を家宅捜索してみたらいいと思う。