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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
彼は取締のきびしい中をくぐって、麻薬を手に入れなければならない悩みを持っていた。そんなことから、彼は普通の製造工程のところから遠ざけられて、試験部で働いていたわけである。
井東を調べたところが、はじめは仲々いわなかった。しかし取調べの途中で、彼が麻薬中毒者であることも分り、それから糸がほぐれていって、遂に彼が白状したところによると、問題の軽い缶詰は、旗田亀之介に頼まれて、彼井東が缶詰仕上げをやったに相違ないことが明白となった。もちろん彼は、缶詰の中にそんな恐ろしいものが入っているとは知らなかったという。ただ亀之介からいわれた通りに蓋をつけて熔接したのだという。彼は亀之介からしばしば麻薬を受取っているので、頼まれたことはしないわけにはいかなかったのだという。
その缶詰をこしらえあげたところへ、偶然本郷末子が入って来て、その缶詰を手に取上げようとしたので、井東はあわてて彼女の手を抑えたという。だからお末の指紋は、このときについたと分った。
亀之介は、お末がここに勤めていることを知っていたので、常に警戒して、お末と顔を合わさないようにしていた。問題の缶詰を封入した日も、彼はお末が入って来たと知ると、急いで部屋から逃げだした。