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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
その間に立って、自分が苦心さんたんして進行係をつとめるから、とにかく曲りなりにでも事件の真相がわりあい手取早く判明して来るのである。なんのことはない、自分は店の婿養子の引立て役の古顔の番頭みたいなものである、と大寺警部はいつも心の中でひそかにぼやいていた。だからこの事件だってそうだ。検事は現場をまごまごしているだけで、まだ容疑者の只一人をも指名していないし、関係者の訊問すらまだやっていない。
それに反し自分は既にかずかずの手配をしている。ハンドバグを、この部屋の、しかも殺された旗田鶴彌のお尻の下に残しておいたその持主の土居三津子を逸早く逮捕し、容疑者第一号として保護を加えてある。この事件は土居三津子がやったことは十中八九までは確かであり、他の者は殆んど調べる必要がないと警部は睨んでいる。自分のやり方としては、この際土居三津子をどんどん取調べていって犯行を自白させるのが一番早い。
しかし現場には検事たちも来ているし、なんだかんだと面倒な取調べや手続がくりかえされているので、こうして温和しくその片附くのを待っているわけだ。並々ならぬこの辛抱づよさというものを、自分は十八年の勤続によって仕入れたのである。