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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
この事件の底には、もっともっとねばっこいものが存在しているように思われてならなかった。折よくというか、亀之介の申立によって、そのねばっこいものが水面から頭を出し始めたように思う。つまり亡くなったこの邸の主人鶴彌と家政婦小林とそして亀之介の三角関係というようなものが存在し得るのではないか――。
「すると、婦人関係の怨恨でもって御実兄は、殺害されたとお考えなんですね」
「いや、それは私の臆測の一つです。私がちょっと気がついたのはそれだというだけのことです。私は兄貴の事業のことや社交のことを全く知らんですが、もしその方を知っていれば何かお話出来るかもしれませんが、まことにお気の毒です。兄貴は全然そういうことを私に窺わせなかったのですからね」
「遺産のこともですか」
検事のこの訊問は亀之介の胸を貫いたと見え、彼は大きく口を開いて喘いだ。だが間もなく彼は口を閉じ、苦がり切った。
「遺産がいくらあるか、そんなことを私が知るものですか」
「遺産は、誰方が相続することになっていますか」
検事の追及は急だ。
「知りませんね。ひとつ兄貴と関係のある弁護士の間を聞き廻って下さいませんか。