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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
だが、検事たちの前に立ったお末の態度はすこしもおどおどしたところがなく、むしろ検事達の方が圧倒されるくらいのものであった。
型の通りの訊問があった後、昨夜のお末の動静を訊ねたところ、
「夕刻の六時にお暇を頂きまして、それから河田町にございますミヤコ缶詰工場へ出勤いたしました。そこで私は九時まで勤めました。仕事は缶詰の衛生度の抜き試験でございます。九時十五分頃工場を出まして、電車で新宿に出、それから旭町のアパートへ帰りました。昨夜は疲れて居りましたので、いつもの勉強はやめて、入浴して十時半に寝ました。それから今朝は六時すこし廻ったころに、この邸へ着きましてございます」
そういい終えるとお末は丁寧にお辞儀をした。
検事たちは愕いた。この女は昼間はこの邸で働きをし、夜は夜で工場で働いているとは、なんとよく働く女だろう。一体何故そんなに働かねばならないのか――。
ちょうどそのときだった。この部屋へつかつかと足早に入って来た者があった。部長刑事の佐々という三十男で、主任大寺警部の腕の一本といわれる腕利きだった。
「お話中ですが……」と彼は断った後、大寺警部の前へ白い布に包んだものを出して拡げてみせた。