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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
と、検事の訊問が始まった。
「いいえ、存じません」
家政婦の声音は、尋常であった。
「亡くなったこの家の主人の所有物ではないのかね」
「旦那さまがピストルをお持ちになっていたかどうか、わたくしは存じません」
「そうか。それならそれとして……」と検事は鋭い瞳を家政婦の面につけた上で「このピストルは君の居間にあったのを見付けたんだがねえ」
「ええッ、このピストルがわたくしの部屋に?」
と、家政婦の顔色はさっと変った。
「一発だけ発射してあるんですよ。そして発射してから間もない。それが君の部屋に隠してあった。どういうわけですかね、説明をして貰いたい」
検事はじりじりと家政婦に肉迫する。
「そのピストルは、わたくしの部屋のどこに隠してあったんでしょうか。全くわたくしの知らないことなんです。そんなことがあれば、誰か……誰かがわたくしに罪をなすりつけるためにそのような恐ろしいことを――」
「他人の陰謀だというんですね。それならそれは一体誰です。誰だと思いますか」
「……はい」家政婦の目は混乱した。
「それは申上げられません」
「言えない。何故言えないのですか」
「…………」
「死んだ主人の弟の亀之介氏ですか」