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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
そこは雑然と書籍が積みあげられ、実験室には電気の器械器具が並び、レトルトや試験管が林のように立っていて、博物館と図書室と実験室を一緒にしたような混雑を示している部屋だった。帆村は、この雑然たる部屋を滅多に掃除させなかった。これはたとえ一枚の紙片が掃きとばされても重大な結果となることがあったし、また薬品の一壜が壊されても非常に困ることがあったからである。
「まあ、そこへ掛けたまえ」
帆村は時代のついた籐椅子を、彼の大机の方へ引寄せて土居に薦めた。そして帆村自身は、大机に附属している皮革張りの廻転椅子に尻を下ろした。その廻転椅子は心棒がどうかしていると見え、彼が尻を下ろした途端にがくんと大きな音をたてて後へ傾いた。しかし帆村は平然たる顔で、机上のケースから煙草を一本とって口にくわえた。
「さあ、君もこれをやり給え。これは昔の缶入煙草のチェリーなんだからね」
土居は愕いていた。そういう太巻煙草の缶入が昔あったことは、話に聞いていただけだったから。帆村はマッチの火を土居にも貸して、うまそうに紫煙を吸いこんだ。
「妹はどうなんだろう。嫌疑はますます濃くなって行くんだろうか」