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おおおかえちぜんのどくりつ

大岡越前の独立

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《大岡越前の独立(おおおかえちぜんのどくりつ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 页

青空文庫

九

「天一坊が、贋者だって噂もあるじゃあねえか」

「うむ、事によったら、橋の上で大捕物になるかの」

町人達が、橋の上で、濠端で、話している真中を、徒歩で、馬上で、侍が行きかかっていた。

「元和、慶長に兜首を取って二百五十石、それ以来、知行が上ったことがない。式目の表では、士分の者三人を召抱えていなくてはならぬが、妻子五人が食べ兼ねるでのう。それが、一寸、手がついて、男の子だと申せば、天一坊も、少くて五万石」

「いや、部屋住であろう」

「部屋は部屋でも、部屋がちがう」

と、大声に話しながら、二人の国侍が、大股に通りすぎた。

「いくら、御落胤だって――」

「然し、仕方がない」

「だって、お前」

と、いうような会話が、口々に取かわされていた。

九

玄関を通って、廊下へ出ると、左右の部屋部屋には人々が居並んで、頭を下げていた。天一坊は、得意と、満足と、それから、こういう厳粛さに慣れない興奮とから、ぼんやりしながら、歩いて行くと、正面に、板戸のある上り口があった。その二、三間前まで行ったとき、板戸が、後方へ開かれると、大岡越前守が、上り口の正面の上に突立っていた。天一坊は、心臓を圧迫されて、眼で微笑しながら、軽く御辞儀をして、近づいて行くと