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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
とさわ女は云った。
「そうしてなにかあれば、みんなわたくしの責任になさるのよ、あなたはそういう方なんですから」
「その、――どうして障子を閉めるんですか」
「ちょうどいい折です」と彼女は云った、「わたくしあなたに申上げたいことがございます」
さわ女は障子をぴたりと閉めた。座敷の中はそのまま、長いこと静かになっていた。
その日、広一郎が下城したのは午後七時すぎであった。彼は役料十五石で藩の文庫へ勤めているが、十九歳から五年間、江戸邸で昌平坂学問所へ通学したというほかに、さしてとびぬけた才能があるわけではない。二十六歳にもなる城代家老の息子を遊ばせておくわけにもいかないので、せいぜい城中の事に馴れる、というくらいの意味のようであった。
広一郎が居間へはいると、母親が小間使を一人つれてはいって来た。
「今日はおさがりがたいそうおそいようですね」
「はあ」と広一郎は云った、「帰りに村田で夕餉の馳走になりました」
「村田さまってどの村田さまですか」
「三郎助です」
と広一郎は云った。よりみちをするときは断わらなければいけません、とさわ女は云った。母さんは夕餉をたべずに待っていたんです。