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おんなはおなじものがたり

女は同じ物語

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页

青空文庫

それは済みませんでした。そういうときはいちど帰って断わってからゆくものです。そう致しましょう、と広一郎は云った。さわ女はそこで召使をひきあわせ、今日からこれが身のまわりのお世話をします、と云った。

「私のですか」と広一郎は母を見た、「――と云うとつまり」

「あなたの侍女です」

「どうしてですか」

「あなたはやがて御城代になる方です」とさわ女が云った、「もう少しずついろいろな事に馴れなくてはいけません」

「いろいろな事って、どういう事ですか」

「いろいろな事ですよ、あなたも諄いのね」とさわ女は云った、「これは城下の茗荷屋文左衛門という呉服屋の娘で、名はよの、年は十七です、うちでは紀伊と呼びますから、あなたもそう呼んで下さい」

広一郎は「はあ」と云った。

「では紀伊、――」とさわ女は云った、「おまえ若旦那さまに着替えをしてさしあげなさい」

侍女は「はい」と云った。

広一郎は渋い顔をしてそっぽを見た。昼のうちに(さわ女から)教えられたのだろう、よの、否――紀伊という侍女は箪笥をあけ、常着をひとそろえ出して、広一郎に着替えさせた。さわ女は側で見ていて、二、三注意を与えたが、概して紀伊の態度に満足したようであった。