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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

何か話しかけないとまずい感じで、

「この間、惚太郎の二階で、稽古していたアトラクションの方は、どうなったですか」

と、私は言った。

ドサ貫は人なつこそうな、そしていかにも気の弱そうな微笑を浮べて、売り込みがうまく行かないで、稽古したきりまだ一度もやってないと、暗い声だった。

「そりゃ困ったですね」

それで話はポツンと切れた。

私とドサ貫は同時に顔をそむけた。

「ちょっとちょっと、ミルク・コーヒー」

と私は、洋服に下駄ばきのそこの女給仕に言った。細長いテーブルの上には、ゆで卵を盛った皿、袋入りのバター・ピーナッツを入れた瓶、それから、ドーナツ、ワップル、シュークリーム、渦巻カステラの類いを収めたガラスの菓子箱がならんでいる。私はその菓子箱に眼をやっていたが、なんとなく意地汚い気持になって、

「おい、おい、こいつ、くれよ。シベリヤを」

ちびた下駄をズーズーひきずっている女給仕に言った。女給仕の裸の足は、虫のさした跡でデコボコしている。

私とドサ貫は、お互いにソッポを向いていた。

――だが、それからどのくらい経ってからか、気がつくと、私たちは以前からの知り合いのような親しい口を交わしている自分たちを見出していた。