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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
あちこちから啜り泣きが聞える。
(おお、浅草よ。)
私は感動に胸を締めつけられながら、浅草というものに、――その実体はわからない、漠然としたものだが、浅草というものに、手をさしのべたかった。さしのべていた。
(やっぱり浅草だ。)
思わずそう心の中でつぶやいた。何か宙に浮いたような、宙で空しくもがいているような私を救ってくれるのは、浅草だ、やはり浅草に来てよかった、そんな気がしみじみとした。私は泣きたかった。うれしいのだ。――泣いていた。だが、それは浅草の客と一緒に映画に泣いていたのだ。私は浅草というものに対して涙を流したかったのだ。私は、――フワフワと漂うばかりであったのだが、何かに、やっとぶつかった、縋れた、その何かはまだよくわからない、真に縋るべき何かであるか、縋って果して救われる何かであるか、それはわからないまでも、それに縋って進んで行けば、そうだ、私は「頭の上に帽子をのせる」ことができるだろうと、そんな気がするのだった。ヘンな言葉だが、わけを話すならば、いつか酔っ払いが道に落した帽子を拾いあげて頭にのせながら「――帽子の下に頭がある」とどなっていた。