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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

それだけ行きずりの私の耳に入ったので、酔っ払いはその前に何を言っていたのか、それは知らない。何か前にあるのであろうが、そのヘンな言葉はそれだけで充分私の興味を捉え、私の頭に沁みた。

「帽子の下に頭がある。……」

こんな歌か何かあるのかもしれぬ。くだらない悪ふざけの文句かもしれないが、私には意味深長に響いた。

「帽子の下に頭がある。

洋服のなかに人間がある」

いつか私はそうつぶやいていた。頭の上に帽子があるべきである。帽子は人間がかぶるべきものであり、人間の頭のために存在する帽子であるべきだが、帽子のための頭、――そんな人間がいはしないか。帽子、――これはおもしろい象徴だ。

「帽子の下に頭がある」

これはおもしろい言葉だ。おもしろがっていると、言葉の鞭がピシリと私を打った。そうだ、この私が、帽子の下に頭があるような人間ではなかったか。少くともそんな場合が往々ありはしなかったか。……

映画が終った。いよいよショウである。

だが私は、ショウを見るべくK劇場に入ったときの私と、今は違った私をそこに見出していた。私はたとえば花を賞美しようとして、上を向いた気持だったのだが、今は地べたを、自分の足もとをみつめる気持であった。