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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

憤慨というか、なんというか」

末弘は唇をチュッと鳴らして、酒を飲んだ。「いつか、おたくにからんだことがあるんですってね。そんなことも言っていた」

「からんだ? 何のことだろう」

口当りから察すると、酒はどうも黒松百鷹(白鷹に非ず)とか墨松白鷹(黒松に非ず)とかいった類いのアタピンと思えるので、私はひかえながら飲んでいた。

「ミーちゃんの死んだ妹のことで、なんか……」

「ははあ」いつか瓢箪池の「おまさ」に行った時のことだなとわかった。

この店の片隅に、古武士といった風貌の、だがうらぶれた身なりの痩せた中年の男がいて、気張っているのか癖なのか、背骨をしゃんとそらせて、酒を水でも飲むような無表情な顔で悠然と飲んでいる。それに眼をやりながら、私は心の片方で、何か気になるその男がどんなようなことを頭のなかで考えながら酒を飲んでいるのだろうかと考え、それが全然想像がつかないのに、妙ないらだたしさに似たものを感じていた。さよう、人は他人の頭のなかにある考えを、その人の顔を見るような工合に見ることができないのは当り前のことだが、考えてみると、その当り前さはなかなか薄気味が悪いものだ。