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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

でお座敷の仕事の帰りだという美佐子と会った。

「やになっちゃうわ。踊って帰ろうと思ったら、ついでに酌をして行けだって。……まるでダンス芸者じゃないの」

美佐子は眼のふちを赤くして、だるそうに鉄板の前に坐った。

「ミーちゃんは、それで、サービスしてやったの」

貝のままの蛤を鉄板の前にのせて、ご飯蒸しのアルミの蓋をすっぽりとかぶせながら、そう言う「惚太郎」の細君の声には、たしかに軽い憤りがこめられていた。

「だってエ、――馬鹿にしていると帰ろうと思ったところ、そこの、芸者衆だったらお出先と言うのね、お出先の女中さんにまあまあと頼まれちゃって。お客さまが、ああおっしゃるんだから、ひとつ頼むって言われちゃって」

「お客さま? なアに、そのお客さまは」

細君は自分が辱しめを受けたように、はっきりと怒った声だった。

「なんの宴会なの。――どこ? そのお座敷は」

「○○の△△荘」

はがしで鉄板を、軽くだがヤケな感じで美佐子は叩いて、

「――どっかの工場の旦那方らしかったわ。軍需景気って口ね、いやな客」

側で子供が、もう夜も遅いのに玩具のタンクでひとりでおとなしく遊んでいる。