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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

た」

彼はぎょっとした。この場に及んでたいしゃくさまをどうしようとするのか、証人にでも呼び出そうというのかと思い惑った。すると彼女はうやうやしい口ぶりで、今日は帝釈さまの日だから、そっちへ足を向けて寝ると罰が当るのだ、と説きあかしてくれた。

「それで安心はしたものの、あっしはまた困った、たいしゃくさまがどっちの方角に当るかなんて、こっちはてんで知りゃあしねえ、たんばさん知ってますかい」

「そうさな、まあ、――まあ、知らないようだな」

くに子は眉をしかめて考えこんだが、やがて、それでは自分のもと知っている方角でまにあわせようと云い、西南のほうを枕にして寝たのであった。

「次の晩はおめえ不動さまだ」と徳さんは云った、「こいつはあっしも縁日で知ってるから迷うこたあなかった、こんぴらも見当はついたし山王稲荷もすぐにわかった、かんのんさまのときにゃあまごついたっけ、なんしろおめえかんのんとくりゃあ四方八方にあらあ、これにゃあくに子のやつも匙を投げたね、さんざん考えたあげく、本山さまで勘弁してもらおう、ということでやっとおちついた、って始末よ」

「それは毎晩のことかい」