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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
ちょろはばんくんがめしを三杯に味噌汁を二杯半、香の物を独りで八割がたかっ込むのを認め、こころぼそいような気分になる。
わが七代目はめしを食うことが早かった。一日じゅうのっそりとして、徹底的になにもしないのは、めしを食うためのエネルギーを溜めておくかのようで、一旦ちゃぶ台に向ったとなると、両手と口とにすべての機能が集中し、まるで全開にされた発動機のように、みごとな速度でかっ込み、噛み、のみおろし、かっ込み、噛み、のみおろす、というあんばいであり、どのくらいが一人の分量かなどということもまったく気にするようすがなかった。
めしは三杯ずつ、味噌汁は二椀ずつ、おかずや香の物は二人分を皿へ盛るのが、春彦の習慣であった。したがって、速度がおそければおそいだけ、彼は自分の割当てまでばんくんに食い込まれるわけで、そうはさせまいとりきむのだが、悲しいかな彼には会話を休止するということができない。ここはちょっと黙って、めしのほうを片づけようなどと思うと、逆に取っておきのすばらしい話が押せ押せと出てきて、食事の速度を大幅にさげる結果になった。
「きみ、めしはよく噛まないと毒だよ。