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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
「でぶの、な」と他の子供が注を加えた。
春彦は考えてから、口の中でぶつぶつなにか呟いた。怒りっぽいでぶ。子供たちが知っているかみさんとすると、――彼は首を捻り、ここで自分の妻になった女たちのことを、一人ずつ思いだそうとするようすだったが、それよりも七代目かぼちゃに発見される危険のほうが大きいと思ったか、あるいはまた頭の中が新事業のもくろみで充満しているため、その他の思考がうまくはたらかないのか、まもなく鞄を持ち直すと、子供たちにあいそ笑いをした。
「じゃあ坊やたち、またな」と彼はソフトの庇をちょっと摘んだ、「ぼくの来たことはないしょにしておくれよ」
「どうしてさ」と一人がきいた、「うちへ帰んないの」
「うん、いそがしいんでね」彼は笑ってみせた、「とてもいそがしいんだ、二時に登記のことで人に会わなくちゃならないんだ、じゃ坊やたち、元気でな」
彼はすばやく、あたりに眼をくばりながらあるきだし、だんだん歩速を高めながら、たちまち遠くさらに遠く、中通りのほうへ去っていった。
肇くんと光子
福田肇くんは二十七歳、なにがし私立大学中退だそうだが、いまはこしかけに廃品回収業をやっている。