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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

いわゆるこれを悪んでその死を欲するとはこのことなり。ゆえにこの輩の不平を満足せしむれば、世上一般の幸福をば損ずるのみにて少しも益するところあるべからず。

或る人いわく、「欺詐虚言の悪事も、その実質において悪なるものなれば、これを怨望に比していずれか軽重の別あるべからず」と。答えていわく、「まことに然るがごとしといえども、事の原因と事の結果とを区別すれば、おのずから軽重の別なしと言うべからず。欺詐虚言はもとより大悪事たりといえども、必ずしも怨望を生ずるの原因にはあらずして、多くは怨望によりて生じたる結果なり。怨望はあたかも衆悪の母のごとく、人間の悪事これによりて生ずべからざるものなし。疑猜、嫉妬、恐怖、卑怯の類は、みな怨望より生ずるものにて、その内形に見わるるところは、私語、密話、内談、秘計、その外形に破裂するところは、徒党、暗殺、一揆、内乱、秋毫も国に益すことなくして、禍の全国に波及するに至りては主客ともに免るることを得ず。いわゆる公利の費をもって私を逞しゅうするものと言うべし」

怨望の人間交際に害あることかくのごとし。今その原因を尋ぬるに、ただ窮の一事にあり。