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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

の術を学び、百姓の仕事を不満足なりとして著書の業に従事するがごときは、働きの大小軽重を弁別し、軽小を捨てて重大に従うものなり。人間の美事と言うべし。然りしこうして、そのこれを弁別せしむるものはなんぞや。本人の心なり、また志なり。かかる心志ある人を名づけて心事高尚なる人物と言う。ゆえにいわく、人の心事は高尚ならざるべからず、心事高尚ならざれば働きもまた高尚なるを得ざるなり。

第二 人の働きはその難易にかかわらずして、用をなすの大なるものと小なるものとあり。囲碁・将棋等の技芸も易きことにあらず、これらの技芸を研究して工夫を運らすの難きは、天文・地理・器械・数学等の諸件に異ならずといえども、その用をなすの大小に至りてはもとより同日の論にあらず。今この有用無用を明察して有用の方につかしむるものは、すなわち心事の明らかなる人物なり。ゆえにいわく、心事明らかならざれば人の働きをしていたずらに労して功なからしむることあり。

第三 人の働きには規則なかるべからず。その働きをなすに場所と時節とを察せざるべからず。譬えば道徳の説法はありがたきものなれども、宴楽の最中に突然とこれを唱うればいたずらに人の嘲りを取るに足るのみ。