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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
十銭より一円、一円より千円万円、ついには幾百万円の元金を集めたる銀行の支配人となり、または一府一省の長官となりて、ただに金銭を預かるのみならず、人民の便不便を預かり、その貧富を預かり、その栄辱をも預かることあるものなれば、かかる大任に当たる者は、必ず平生より人望を得て、人に当てにせらるる人にあらざれば、とても事をなすことは叶い難し。
人を当てにせざるはその人を疑えばなり。人を疑えば際限もあらず。目付に目をつけるがために目付を置き、監察を監察するがために監察を命じ、結局なんの取締りにもならずしていたずらに人の気配を損じたるの奇談は、古今にその例はなはだ多し。また三井・大丸の品は正札にて大丈夫なりとて品柄をも改めずしてこれを買い、馬琴の作なれば必ずおもしろしとて、表題ばかりを聞きて注文する者多し。ゆえに三井・大丸の店はますます繁盛し、馬琴の著書はますます流行して、商売にも著述にもはなはだ都合よきことあり。人望を得るの大切なることもって知るべし。
「十六貫目の力量ある者へ十六貫目の物を負わせ、千円の身代ある者へ千円の金を貸すべし」と言うときは、人望も栄名も無用に属し、ただ実物を当てにして事をなすべきようなれども、世の中の人事はかく簡易にして淡泊なるものにあらず、十貫目の力量なき者も坐して数百万貫の物を動かすべし