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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

と。世人またこの教えを誤解して、学者は学者、医者は医者、少しくその業を異にすれば相近づくことなし、同塾同窓の懇意にても、塾を巣立ちしたる後に、一人が町人となり一人が役人となれば、千里隔絶、呉越の観をなす者なきにあらず。はなはだしき無分別なり。人に交わらんとするには、ただに旧友を忘れざるのみならず、兼ねてまた新友を求めざるべからず。人類相接せざれば互いにその意を尽くすこと能わず、意を尽くすこと能わざればその人物を知るに由なし。試みに思え、世間の士君子、いったんの偶然に人に遭うて生涯の親友たる者あるにあらずや。十人に遭うて一人の偶然に当たらば、二十人に接して二人の偶然を得べし。人を知り、人に知らるるの始源は、多くこの辺にありて存するものなり。人望栄名なぞの話はしばらく擱き、今日世間に知己朋友の多きは、差し向きの便利にあらずや。先年宮の渡しに同船したる人を、今日銀座の往来に見かけて双方図らず便利を得ることあり。今年出入りの八百屋が、来年奥州街道の旅籠屋にて腹痛の介抱してくれることもあらん。

人類多しといえども、鬼にもあらず蛇にもあらず、ことさらにわれを害せんとする悪敵はなきものなり。