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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
今もし働くべき仕事をば捨て置き、ひたすらわが欲するもののみを得んとせば、他人を害してわが身を利するよりほかに道なし。これを人間の所業と言うべからず。この時に当たりて欲と道理とを分別し、欲を離れて道理の内に入らしむるものは誠の本心なり。第五、人にはおのおの意思あり。意思はもって事をなすの志を立つべし。譬えば世の事は怪我の機にてできるものなし。善き事も悪き事もみな人のこれをなさんとする意ありてこそできるものなり。
以上、五つのものは人に欠くべからざる性質にして、この性質を自由自在に取り扱い、もって一身の独立をなすものなり。さて独立といえば、ひとり世の中の偏人奇物にて世間の付合いもなき者のように聞こゆれども、けっして然らず。人として世に居れば、もとより朋友なかるべからずといえども、その朋友もまたわれに交わりを求むることなおわが朋友を慕うがごとくなれば、世の交わりは相互いのことなり。ただこの五つの力を用うるに当たり、天より定めたる法に従いて、分限を越えざること緊要なるのみ。すなわちその分限とは、我もこの力を用い、他人もこの力を用いて、相互にその働きを妨げざるを言うなり。