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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
概してこれを言えば、わが輩の職務は今日この世に居り、わが輩の生々したる痕跡を遺して遠くこれを後世子孫に伝うるの一事にあり。その任また重しと言うべし。
豈ただ数巻の学校本を読み、商となり工となり、小吏となり、年に数百の金を得てわずかに妻子を養いもってみずから満足すべけんや。こはただ他人を害せざるのみ、他人を益する者にあらず。かつ事をなすには時に便不便あり、いやしくも時を得ざれば有力の人物もその力を逞しゅうすること能わず。古今その例少なからず。近くはわが旧里にも俊英の士君子ありしは明らかにわが輩の知るところなり。もとより今の文明の眼をもってこの士君子なる者を評すれば、その言行あるいは方向を誤るもの多しといえども、こは時論の然らしむるところにて、その人の罪にあらず、その実は事をなすの気力に乏しからず。ただ不幸にして時に遇わず、空しく宝を懐にして生涯を渡り、あるいは死しあるいは老し、ついに世上の人をして大いにその徳を蒙らしむるを得ざりしは遺憾と言うべきのみ。
今やすなわち然らず。前にも言えるごとく、西洋の説ようやく行なわれてついに旧政府を倒し諸藩を廃したるは、ただこれを戦争の変動とみなすべからず。