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あんごしんにほんふどき

安吾新日本風土記

坂口 安吾

03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页

青空文庫

また弥彦角田をめぐる麓の村々はすべて美人系であり、越後美人の産地という伝説がある。しかし、この土地の人々はさらに云う。角海だけが特別だ、と。角海は別して美人系だというのである。

ともかく角海という部落は今でも昔ながらに往来の道すらもない置き残された土地であるが、昔はこのあたりが人里の元祖なのかも知れないのである。

つまり角田村は云うまでもなく、弥彦角田周辺の平野が概ね信濃川の土砂によって後年に至って土地をなし、後年に至って人々が移り住んだにひきかえ、角海にはそれ以前の太古から人間が住んでいたと考えられるからである。その理由として、慶長年間に称名寺というものが角海にできた。ところが、平野側の村々がこの道もない角海の称名寺の檀家になっており、角海の方が往昔に於ては文化の中心の観を呈しているのである。今日称名寺が巻へ引越したのも、そっちに檀家が多いからであった。この称名寺が毒消しをつくりはじめたのは初代の和尚からであり、つまり慶長年間からと伝えられている。今から三百五十年ほどの昔である。気候のよい季節に私は改めて角海に行ってみるつもりだ。この部落は今は石を切りだして生計をたてているそうだ。