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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
毒消し部落の旦那方はこの角海の石で塀を立てているのが少くない。
私もかなり日本の諸国を旅行した。しかしどれほど気候のよい南国に於ても、この北国の毒消し部落ほど裕福らしい農家がそろっているところは見たことがなかった。時は雪国の真冬であるというのに、私がこの部落でひしひしと感じたものは南国の情緒である。どこにも暗さがないのだ。村全体にはりつめているのは明るさだけだ。この村の貧乏のシンボルだという砂丘の斜面の畑までがただもう明るく爽やかな景観に見えるのだから仕方がない。
それというのも部落の家々の裕富そのものの建物のせいである。それを見るまでは、同じ砂丘の畑が雪国でも別して悲しい畑のようにしか目に映じなかったのである。ボロ小屋の役場で村長の話をきいてる時もそうだった。部落の奥へ踏みこみ、次々に現れてくる邸宅のような農家を見て、同じ砂丘の景観が一変してしまったのである。
このおびただしい邸宅がまだなかった昔、砂丘の畑があるだけだった昔はたしかに悲しい部落であったに相違ない。そして部落の女は否応なく毒消しの行商にでかけなければならなかったに相違ない。米を食うためにである。