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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 页

青空文庫

すると伊勢守は、

「それは悪い、それでは、こう取る」

といって、忽ち、前の二日と同じように、指摘した所へ太刀を与えた。

宗厳は、我執の太刀をすてて、

「初めて、兵法を観た」

といった。

それから半歳の間、強って、伊勢守を小柳生城にひきとめて、一心に教わった。

伊勢守は、永くはと、袂を分つ折に、

「まだまだ私の兵法などは未完成なものです。あなたは若い、私の未完成を完成してみるがよい」

こういって、一つの公案を授けて行った。その公案――問題というのは、

無刀の太刀如何?

という工夫であった。

宗厳は、以来数年間、無刀の理法を考えつめた。寝食をわすれて、研鑽した。

後、伊勢守がふたたび彼を訪れた時には、彼の眉は明るかった。

「いかがあろうか」

と、試合うと、

「む!」

伊勢守は、一目見て、

「もうあなたと太刀打はむだなことである。あなたは、真理をつかまれた」

そういって、印可、絵目録四巻を残して去った。

柳生流は、ここから誕生し、また、石舟斎宗厳の晩年の韜晦も、この兵法が生んだところの一流の処世術であったのである。

三

今、彼の住んでいる山荘は、もちろん小柳生城の中ではあるが、砦作りの頑丈な建築は、石舟斎の老後の心境にはぴったりしないので、べつに、簡素な一草庵を建て、入口もべつにして、まったく一箇の山中人の生活に余生を楽しん