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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 页
「丙太、汝れ、おばばに代って、ここで桑摘んどれ」
「おばば、どこへゆくだ」
「邸へ、帰ってみる、新免家の武蔵がもどっているなら、又八も、邸へ帰っているにちがいなかろう」
「おらも行く」
「阿呆、来んでもええ」
大きな樫の木にかこまれた土豪の住居である。お杉は、納屋の前へ駈けこむと、そこらに働いている分家の嫁や、作男に向って、
「又八が、帰って来たかよっ」
と、怒鳴った。
みんな、ぽかんとして、
「うんにゃ」
と、首を振った。
しかし、この老母の興奮は、人々のいぶかるのを、間抜けのように叱りつけた。息子はもう村へ帰っているのだ。新免家の武蔵が村をあるいている以上、又八も一緒にもどって来ているに違いない、早くさがして邸へ引っぱって来いと命じるのだった。
関ヶ原の合戦の日を、ここでも大事な息子の命日として悲しんでいたところだった、わけてもお杉は、又八が可愛くて、眼の中へでも入れてしまいたい程なのだった、又八の姉には聟を持たせて分家させてあるので、その息子は、本位田家の後継息子でもあった。
「見つかったかよっ?」
お杉は、家を出たり入ったりして、繰返し繰返し訊ねていた。