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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

再び通りかかった細君に「オイわかったよ、フリージアだよ、これは……」と言って説明しようとした。それからまた老母の所へ行って植え付け場所を相談したりした。

翌日になるとはたしてはがきが来た。球根はフリージアに相違なかったが、差出人は堅吉の思いもかけない人であった。それはK市ではなくてA村の姉の三男が分家している先からであった。平生は年賀状以外にほとんど音信もしないくらいにお互いに疎遠でいた甥の事は、堅吉の頭にどうしても浮かばなかったのであった。

しかしこう事実がわかってみると、堅吉の頭は休まる代わりにかえってまた忙しくならなければならなかった。

第一には手跡の問題であった。小包のあて名の字は甥らしかった。それがどうしてK市の姉の手紙のあて名に似ているかが不思議であった。もしK市の姉の孫――この姉のむすこはなくなっていた――が手紙のあて名を書いたのだとすると、それがどうしてこれほどまでよく、その子供の父の従弟のに似ているかが不思議であった。しかしA村の甥がK市の姉すなわち彼の伯母のために状袋のあて名を書いてやったという事もずいぶん可能で蓋然であるように思われた。