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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
しかしふたつの手跡は似ていると言いながら全く同じであるとは考えにくい点もないではなかった。
もう一つのわからない事は、平生別に園芸などをやっているらしくもない――堅吉にはそう思われた――甥がどうしてフリージアの根などをよこしたかが不思議に思われた。どうも、このフリージアの種は、やはりK市の姉のほうから縁を引いたものではないかと思われてしかたがなかった。夫婦暮らしで比較的閑散な田園生活を送っている甥が、西洋草花を栽培しているのは自然な事だと思うだけではなんだか物足りないように思われるのであった。
堅吉はすぐ甥にあててはがきを書いて、受取と礼の言葉を述べた末に、手跡の不思議と球根の系図に関する想像を書いてやった。
なんとか返事があるかと思って待っていたが十日たってもついに来なかった。考えてみると彼は別に返事を要求するようなふうの書き方をしたわけではなかった。少なくも甥のほうではそうは取らなかったに相違ない。
もう一度わざわざそんなことを聞いてやるのも、おかしいと思ってそれきりにしてしまった。
花壇の縁に植えた球根はじきに芽を出して勢いよく延びて行った。