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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

その後大学生時代に神戸と郷里との間を往復する汽船の中でいつも粗悪な平円盤レコードの音に悩まされた印象がかなり強く残っている。船にいくじがなくて、胸に込み上げる不快の感覚をわずかにおさえつけて少時の眠りを求めようとしている耳元に、かの劣悪なレコードの発する奇怪な音響と騒がしい旋律とはかなりに迷惑なものの一つである。それが食堂で夜ふけまで長時間続いていた傍若無人の高話がようやく少し静まりかけるころに始まるのが通例であった。波が荒れて動揺のすさまじい時だけはさすがにこの音も聞こえなかったが、そういう時にはまた船よいの苦悩がさらにはなはだしかった。

汽船会社は無論乗客の無聊を慰めるために蓄音機を備えてあるので、また事実上多数の乗客は会社の親切を充分に享楽しているでもあろうが、これがために少数の「除外例」が受ける迷惑も少しは考慮の中に加えてもらいたいと思った事も幾度あったかわからない。

このような不平を起こすのが間違っているという事は、その後だんだんに少しずつわかって来た。汽船の夜の蓄音機はこのごろどうなったか知らないが、これに代わるべきさらに強烈なものは今の世上にあまりに多い。